世界的な名店「エル・ブジ」や「アストリッド・イ・ガストン」などで経験を積んだ太田さんは、イタリアやスペイン、ペルーでの修行の後にアマゾンの奥地でカカオを取り巻く貧困に出会いました。

太田さんは日本で販売されているチョコレートの多くは、メーカーが格安で買い叩いたカカオにバターや生クリームを加えたものだと語ります。
こういった方法ではメーカーは潤いますが、カカオの生産者は貧しいままです。
そこで、太田哲雄さんはチョコレートではなく、カカオそのものを日本に直輸入し、貧しい生産者の方々への還元と共に、その価値を見出そうという取り組みをスタートしました。

このカカオの酸味と香りを最大限引き出すには、生クリームやバターを極力控えめにして、なるべく水を使いたいと思いました。
しかし、肝心のカカオパウダーは乳脂肪がないと混ざりにくく、水を混ぜると分離したり、食感が悪くなったり、硬くなりすぎたり、柔らかくなりすぎたり、分量の調節に四苦八苦しました。

作り方は、砕いたカカオペーストと溶かしたカカカオバター、砂糖と卵を加えて混ぜ、生地をテリーヌ型の中に流し入れます。
生地の表面には、カカオの殻の部分であるほろ苦いカカオニブをトッピング。
カカオのすべての部位を余すことなく丸ごと味わえるよう、素材ひとつひとつの魅力を丁寧に生かしています。